病気や疾患

Illness or disease

咽頭、喉頭(いわゆる「のど」)のがんについて

咽頭・喉頭(のど)のがん

これまで「のど」のがんは発見されたときにはすでに進行しており、早期の状態で発見されることは非常に稀でした。しかも進行したのどのがんの治療は声を失ったり、大きな手術で顔の一部が変形するなど大変な苦痛を伴います。ですが近年、NBI(Narrow band imaging)やBLI (Blue laser imaging)を初めとする内視鏡イメージングの技術革新によってごく初期のがんが数多く発見されるようになってきました。とくにのどのがんについては初期に見つけるメリットが非常に大きいと言うことがよく分かってきました。
内視鏡を受けたことがある方は良く経験されると思いますがのどの所で「オエッ」となりますよね。のどの手前でじっくり観察すればするほどそのオエッとする反射が起こりやすくなります。そのため咽頭を観察するときは特殊な方法を用いて反射が起こりにくくする工夫をしています。
早期発見のためにはどのような方ががんになりやすいかということが分かってきましたので対象をある程度絞って検査を行うことが大切です。
過去に一度でものどや食道がんと診断されたことがある方、お酒を飲んですぐ顔が赤くなる方、お酒好きの方はそうでない方に比べ何倍も発症リスクが高くなります。

食道がんについて

         

食道がんは、早い段階でみつかれば、5年後の生存率は75%以上ですが、最も病状が進行した段階で見つかった場合、生存率は約20%と低下します。食道がんは胃がんや大腸がんに比べて発生頻度が低いためご自身が将来この病気にかかる確率は低いと考えられます。しかしながら一度発生するとその特性から、周囲に浸潤しどんどん進行していきます。そして進行した段階での治療は大きな侵襲を伴います。進行した状態で見つかったとしても専門の施設ではより高度な医療が提供できるようになっていますので食道がんの治療ならこの施設というように自信を持って治療をお勧めできます。ただ、「進行した状態で見つかるのを何としても避けたい、そして避けることができる」というのが私のこれまでの経験でわかったことです。

食道がんの危険因子

日本人において90%以上と頻度の高いがんの組織型(扁平上皮がん)の食道がんは、喫煙と飲酒が最も重要な危険因子で、喫煙と飲酒を両方好む人はさらに危険性が高まることが知られています。特に飲酒の影響は大きく、世界保健機構(WHO)はアルコール飲料が体内で分解されてできるアセトアルデヒドを、「最も関連の強い発がん物質」と認定しました。
近年、日本人の多くが、このアセトアルデヒドを体内で分解しにくい体質を持ち、この体質の人は、アルコール飲料を摂取すると、顔がすぐに真っ赤になることがわかりました。顔がすぐに真っ赤になる体質の人がアルコールを大量に飲むほど、アルコール濃度が高い酒を飲むほど、発がんの危険性は高まります。つまり、飲酒の習慣があって、飲酒すると顔が赤くなり、なおかつ、喫煙もしている中高年男性が最も食道がん発症の危険性が高いということになります。

食道がん(早期)の症状について

食道がんが進行してくると、熱いものが胸に滲みるとか食べ物がつかえる感じがするなどの症状を自覚することがありますが、早期のうちは症状がほとんどありません。すなわち、食道がんは、症状を自覚してから発見される場合は、進行したがんとして発見されることが多いのが実情です。

食道がんの早期発見について

一般的に、症状が現れた段階では、病状が進行していることが多いです。このため、治癒可能な早期の段階で食道がんを発見するためには、積極的に内視鏡検査を受けることが大切です。
特に、前述のように、喫煙者でよくお酒を飲む人、お酒を飲むと顔が赤くなる人は定期的な内視鏡検診を受けてください。バリウムによる透視検査では早期発見は困難なことが多く、内視鏡検査によってのみ、治癒が可能な早期のがんを発見できることがほとんどです。
近年、開発された新しい画像強調内視鏡検査(NBI拡大内視鏡/BLI拡大内視鏡)では、これまで発見が困難であったごく初期の小さな食道がんも発見できるようになりました。当院では、この画像強調機能がついた内視鏡を備えており、随時検査が可能です。さらに、口から内視鏡を飲む方法での検査が苦手な方には、鼻からの内視鏡検査(経鼻内視鏡検査)をおすすめしていますので、内視鏡検査の予約の際に“口から“か“鼻から”か、希望を当医にお伝えください。経鼻内視鏡検査では、嘔吐反射がきわめて少なく、検査中も画面を見ながら検査担当医と会話をすることもできますので、歯磨きの際などに吐き気がおこりやすい(えづいてしまう)方にはおすすめいたします。

胃がんについて

胃がん

胃がんは日本人が罹患するもっとも多いがんのひとつで、かつて胃がんは日本人のがんによる死亡数のなかで第1位でしたが、最近では肺がんに続き第2位、女性は第4位と減少傾向にあります。後述するヘリコバクター・ピロリ菌の除菌療法が2013年に保険適応され、また早期発見のための診断技術や治療法が新たに開発されたことが寄与していると考えられています。

胃がんの危険因子について

喫煙や食生活などの生活習慣や、ヘリコバクター・ピロリ菌の持続感染などが胃がん発生のリスクを高めると報告されています。食生活については、塩分の多い食品の過剰摂取や、野菜、果物の摂取不足が指摘されています。ヘリコバクター・ピロリ菌は幼少期に感染し、胃の中にすみつきますが、衛生環境が整った現在では感染率が低下してきています。しかしながら、衛生環境が不十分であった頃に幼少期を過ごした50歳以上の世代は70-80%近くが感染していると言われます。ヘリコバクター・ピロリ菌に感染した人のすべてが胃がんになるわけではありませんが、2013年からはヘリコバクター・ピロリ菌の除菌療法が保険適応として承認されましたので、定期的な胃の検診と除菌療法を受けることが推奨されています。

胃がんの症状について

胃がんでみられる症状に特有なものはありません。早期胃がんの場合は症状がなく、検診などで偶然見つかることも多くみられます。がんが進行してくると腹痛、腹部不快感、食欲低下、吐き気、嘔吐、胸やけなどがみられますが、普段、胃の調子が悪いときや、ほかの胃腸の疾患でも経験する症状です。さらに進むと、がんそのものからの出血によって吐血や黒色便などの出血症状が出現し、全身の倦怠感、体重減少などの症状が出現する場合があります。胃腸の症状に応じて市販薬を飲んで様子を見たり、無症状だからといって健康を過信したりすることは避けて、まずは医療機関で検査や検診を受けることが重要です。

胃がんの早期発見について

内視鏡(いわゆる胃カメラ)検査を受けていただくことで胃がんを早期に発見することができます。近年の技術革新によって、胃の粘膜の表面や微小な血管を詳細に観察することが可能となり、胃がんに対する診断の精度がとても向上しました。具体的にはNBI(Narrow Band Imaging)やBLI(Blue Laser Imaging)という特殊な画像診断技術を用い、がん表面の模様や微小な血管のパターンを観察することで、その場でがんの診断を行うことができるようになったのです。最終的には、内視鏡に挿入した鉗子で胃粘膜の表面をつまんで採取した組織を顕微鏡で確認することで確定診断しますが、がんを発見して診断するまでのプロセスがこれまでと大きく変わりました。当院で最新の機器によって行っているため、早期胃がんの発見がより正確に行えるようになっています。

十二指腸腺腫(がん)について

十二指腸腺腫(がん)

頻度としては非常に稀ですが他の消化器のがんと同様に早期で発見できれば内視鏡による切除が可能です。早期のがんは全く症状がありませんので偶然発見されることがほとんどです。もちろん、当院でも十二指腸は丁寧に観察し、十二指腸のがんを見落とさないよう細心の注意を払って検査を行っていきます。

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